【仕事は、本来正しく“厳しい”!?】ホワイトカラーの生産性はなぜ低いのか|村田聡一郎

ホワイトカラーの生産性はなぜ低いのか
  • ゼロ成長日本、25年の歴史に終止符を打つにはどうしたらいいでしょうか?
  • 実は、ホワイトカラーの生産性がキーかも。
  • なぜなら、他国と比べてめちゃめちゃに低いし、逆に向上の機会があるととらえられるからです。
  • 本書は、ホワイトカラーの生産性が上がらない理由を説く1冊です。
  • 本書を通じて、いかにホワイトカラーの労働生産性を高めていくかヒントを得ます。

ゼロ成長日本!?

ほぼゼロ成長の先進国は、日本です。なんと25年以上もゼロ成長が続いているのです。その間に各国は、生産性を上げ、強い企業が登場し、自国のマネーも強くなり、投資が集まる国になっています。残念ながら日本はいまだデフレの中で、一向に上がらない賃金のもと、海外旅行が高すぎる!なんで!?といって、いつの間にやら差が開いている現状に驚くばかりです。

経済的に見れば、もはや日本は先進国ではなくなりつつあります。かといって日本人が怠けて働いていないということではなく、みな一生懸命に働いています。何が間違っているのか、その問いに答えをもたらすのが本書です。

それは「ホワイトカラーの働き方」、より正確に言えば企業・組織による「働かせ方」である。

キーは、ホワイトカラーにあります。ひとりひとりの人間先生が尊重されたうえで、最大のパフォーマンスが発揮されて、イキイキと働ける世界観が描けそうで描けていない現状を直視するべきです。

トヨタの生産方式「カイゼン」や「QCサークル」など、これまで日本ではブルーカラーの働く現場の生産性向上は存分に取り組んできました。80年代のJapan as No.1を支えたのは、こうした製造現場主導のボトムアップによる努力んにほかならないでしょう。しかし、転じてホワイトカラーの働きぶりを見てみると、顧客価値にあまり影響がない、社内業務や調整業務に多くの時間を費やさざるを得ない環境を打破しきれないでいます。

業務報告だけのためのミーティングを繰り返し行って、得意先の価値にどれだけフィードバックされているでしょうか?

ホワイトカラーの生産性は、著しく低いです。でも、「なぜ低いのか」を本質的に考えてきませんでした。多くの経営者も、有識者も、学者も、政府も、マスコミも、明快な問いを答えを作り出してこなかったのです。

現在、生産性を向上させて、より良い経済を実現している他国の状況を見てみると、日本とは異なり、ホワイトカラーがグレーゾーン業務(顧客価値にあまり影響がない、社内業務や調整業務)に勤しむことを許されなかったために、結果として生産性を高め続けてきました。

自社のホワイトカラー社員たちに共同作業に「デジタルな自動機械」というげたをはかせて、全体最適を実現させ、より効率よくアウトプットを出すという組織能力を、この25年の間、徐々に高め続けてきたのです。

ブルー vs ホワイト!?

なぜ、ブルーカラーの現場で上手く言っているのに、ホワイトカラーの労働が全く変わらないのでしょうか。その根本原因を考えるとき、両者の仕事の性質が関わってきます。

ブルーカラーの仕事

  • 一定の品質の
  • 多数の
  • モノ

ホワイトカラーの仕事

  • できるだけ有用な
  • ひとつの
  • 情報

このように取り扱う内容も、目標も全く異なるため、生産性向上をするには、別のアプローチが必要になります。ブルーカラーに有用だった方策(例えば、現場主導のカイゼンやQCサークル等)をそのまま適用しようとしても、意味がありません。

人間には、付加価値の高い仕事をし、さらにその付加価値を上げていこうと努力する、という意欲と能力がある。

のにも関わらず、管理者の側が、それを十分に理解せずに、これまでと同じように“グレーゾーンの業務”を粛々と行うこと、あるいは、ブルーカラーの業務改革をそのまま導入しようとするのでは、まったくものごとは好転しないのです。

ちなみに、一時期に提唱され話題となり続けている「ブルシット・ジョブ」についても、ここでは触れておきたいと思います。

ブルシット・ジョブとは、デビッド・グレーバーによって提唱された概念で、実際には必要とされていない、社会に有益でないと感じられる仕事のことを指します。これらの仕事は、本人や周囲の人々が、その仕事が無意味であると認識しているにもかかわらず、続けられることが多いです。ブルシット・ジョブには、管理職の多重層、無駄な書類作業、企業の内部での不要なプロジェクトなどが含まれます。この概念は、現代社会における労働の価値や意義について再考を促し、多くの人々に共感を呼んでいます。グレーバーの研究は、労働の本質や人々が感じる充実感について重要な問いを投げかけています。

こちらの投稿「【あなたは、レンガを積んでいるか?それとも聖堂を建てているか?】ブルシット・ジョブと現代思想|大澤真幸,千葉雅也」やこちら「【気づこう!?】ブルシット・ジョブの謎 クソどうでもいい仕事はなぜ増えるか|酒井隆史」も、ぜひご覧ください。

トヨタのカイゼン方式によって、ブルーカラーの現場がより良くなると、自働化が進みます。これによって、現場にはどんどん人が減少していくことになります。同じことをより少ない人員で行うことができるため、労働生産性が高まるのです。そのために原価をかなり圧縮するだけでなく、ミス自体が減るし、最終成果物の品質も安定します。

減って人員をどうするか?首にできるわけがないので、雇用を維持することに動きます。だから、経営者は頑張るのです。さらにより良い製品やサービス、あるいは、ブランドを構築して、ものごとが動き続ける仕組みをバージョンアップし続けることを自らに課します。

いわば「厳しいWIN-WIN」を目指す仕組みなのだ。

これはつまり、「他の仕事」が常にあることを意味します。特に「他の仕事」でも意味ある仕事がたくさんある状態を企業として目指していく必要があり、これには正しい努力とビジョンが不可欠になります。従業員と経営者がともに「厳しいWIN-WIN」にコミットするのが、トヨタの生産方式の最大のポイントであるのです。

マネジメントは、生産的な仕事を通じて、働く人たちに成果をあげさせなければならない。

これはドラッカーの著作からの言葉です。仕事は、常に人が働くことによって行われることは間違いありません。働くものがイキイキと働けなくても失敗だし、あるいは、生産性をあげられなくても失敗です。いずれもが両立するところを見出しながら、人に意味ある仕事を創出し続けるため、“グレーゾーン”を仕分けする発想が欠かせないと言えるでしょう。

なぜ、変革しないか?

ホワイトカラーの生産性向上のポイントは、ブルーカラーのそれとは異なることを意識して、現在の業務を仕分けし、デジタルの力も活用しながら、効率化し、余剰人員を再配置していくことが求められます。

本来、ホワイトカラーが行うべきは、新規事業の創造、新製品の開発、顧客への高度な対応など、人にしかできない、付加価値の高い非定型な業務です。これらにより多くの時間を振り向けるために、定型業務を自働化することがキーになります。

この理想(あるべき姿)が描けているのに、なぜ、ホワイトカラーの生産性は低下しているままなのか、それについては日本の雇用の特異点について知る必要があります。

終身雇用という社会の通念は薄れてきたと言え、日本企業では、依然として雇用の安定性は高いです。社員は、「よほどのことがない限りクビにならないよね!」と思っているし、経営層にしても「雇用を維持する」という方針はほぼ無条件で支持され称賛せれています。こうした蜜月関係が、マンネリ化を生み出していることも事実でしょう。

「生産性の向上→人間性の尊重」を旨とする小人化がホワイトカラーに適用されることはほぼなかった。部分的なデジタル化は行われてきたが、そこで生み出されたはずの余剰時間は、グレーゾーン業務にそのまま吸収されていった。

このような業務たくさんありませんか?

  • 部分最適なデジタル化を人手でツギハギするような、非効率的かつミスや不正の余地をはらんだ業務プロセス
  • 本来の目的とかけ離れた社員のワークロードを無視した無意味なプロセス
  • 過去のプロセスやルールがそのままになっている現状
  • 上位職者への過度なサービス(=部下のワークロードの私物化)
  • 波風を立てないことを過度に重視した根回し(=既存業務の既得権益化)

日本の会社は、こうしたグレーゾーンのオンパレードであると言います。

よく知られた「パーキンソンの第一法則」を思い出します。すなわち、

「仕事の量は、与えられた時間をすべて使いつくすまで膨張する」

です。

パーキンソンの法則の主なポイントは以下の通りです。まず、仕事は与えられた時間を満たすまで膨張します。例えば、1週間で終わるはずの仕事が1か月与えられると、その期間全体を使い切ってしまう傾向があります。次に、官僚主義の成長です。官僚機構は自己維持や拡大のために無意味な業務やポストを作り出し、組織は自然に肥大化します。最後に、非効率性の蔓延です。時間が余ると、細部に過度にこだわったり、無駄なミーティングを重ねたり、意思決定が遅れるなどの非効率な行動が増加します。

せっかく生まれた余剰資産を、グレーゾーンに吸収させてしまうのは、「働き方」が問題なのではなく、「働かせ方」が問題なのです。ここに日本企業がかわれない真因があります。

サボっているのは管理監督者、つまり「厳しいWIN-WIN」をホワイトカラー職場に適用してこなかった経営陣や上級管理職なのだ。

これは、仕事への見立てと、覚悟の問題です。仕事とは一定程度、やはり厳しさをはらむものなのです。だからこそ、楽しく、やりがいが生まれ、イキイキとするのです。一定程度の抵抗は、人は受け続けるべきなのです。なぜなら、それが生きるということにつながっていくからです。人が本来求めている考えや状態に目を瞑って、自ら生きながら死んではいけません。

次回の投稿では、こうした状況をどのように打破すればいいのか?について詳しくレビューを進めてみましょう。

まとめ

  • ゼロ成長日本!?――ホワイトカラーが足を引っ張っています。
  • ブルー vs ホワイト!?――厳しいWIN-WINを想定した変革をホワイトカラーでも展開するべきです。
  • なぜ、変革しないか?――「働き方」ではなく、「働かせ方」に真因があります。
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