- どうしたら充実した眠りを手に入れることができるでしょうか。
- 実は、眠りについて深い理解をすることで、叶うかも知れません。
- なぜなら、眠りというのは、身体にとってなくてはならない超重要なゴールデンタイムだからです。
- 本書は、眠りによって身体に何が起こるのかを詳しく学ぶ1冊です。
- 本書を通じて、眠りの重要性を再確認することができます。

寝る子は育つ?
生活習慣の中で、なかなか優先できないのが、睡眠、という人も少なくないのではないでしょうか。
そんな人ほど、睡眠についてどのようなメリットがあるいのか改めて理解してみることが大切かも知れません。睡眠はまだまだ科学的に解明されていないことがたくさんありますが、今現在の段階でも知られているたくさんのメリットもあります。それらについて詳しく知ることについて、睡眠を取得する納得感を得て、眠りを優先するマインドセットを整えることができます。
実は、眠っている間の体の動きや変化を、臓器別に解説した本は、意外なことにこれまでありませんでした。
本書は、眠っている間に体にどんな変化があるのか、それによって毎日の体がどうやってアップデートされていくのかを解像度高く説いた1冊となっております。
睡眠は脳だけでなく、体の全体に影響を与える重要極まりない生活習慣なのです。身体に不調をきたしている方や、どうしても睡眠を優先できない人は、今一度、本書をご拝読頂き、睡眠をしっかり取ることを前提に、1日の流れを作ってみることが大切かも知れません。
睡眠も、習慣です。よりよい習慣こそがよりよい人生の基本となります。
睡眠のメリットとして「寝る子は育つ」という言葉を思い出します。実際に成長ホルモンは、睡眠不足の影響を受けやすく、また、成長ホルモンを刺激するGHRH(成長ホルモンを放出するホルモン)は、昼よりも夜に活発になります。上記の言葉をさらに詳しく記述するとすれば、「夜に寝る子は育つ」ということになるでしょう。
風邪で眠くなる?
風邪になるときに、眠気がでるのは、身体のメカニズムによるものです。風邪とは、身体が外部からきた細菌やウイルスによって炎症が起こされている状態です。この炎症で活性化する物質サイトカインが、眠気のもとになっています。
これまでの研究成果を大胆かつシンプルにまとめると、「炎症で活性化したサイトカインが、脳に信号を送って眠気が生じる」となります。
実際に眠くはなるものの、熱があったり、調子がそもそもよろしくないので、深い眠りに至らないのが、風邪のときの睡眠の特徴となります。
そもそも風邪にならないように睡眠をしっかり取るという生活習慣もとても大切です。睡眠を取ることで、免疫を高めることになり、細菌やウイルスへの抵抗力をUPさせることができます。
明らかなことは、睡眠不足は免疫力を確実に低下させるということです。
日常的に質の良い睡眠を心がけることで、身体の力を発揮しやすくするし、万が一病気や風邪にかかってしまった場合でも、しっかりと休息と睡眠の時間を確保することによって、身体の健康を取り戻すことが可能となります。

睡眠不足で脳がしぼむ?
また、睡眠には、頭を良くする(?)効果もあります。
学習し記憶したものごとの整理は、覚醒しているときよりも、眠っている時のほうが脳の中で行われます。眠っている間に学習した記憶が整理されて、なかなか忘れられない長期記憶に移行していくものと、忘れてもヒントを出されれば思い出すもの、完全に忘れてしまい記憶から消えてしまうものにふるい分けられていきます。
睡眠中の記憶の整理は「シナプス」の整理
脳の主な機能は、情報の伝達と処理です。この働きがニューロン(神経細胞)によって行われています。人の脳にはなんと約1000億ものニューロンがあります。ニューロンは、細胞体から電気コードのように出ている軸索が情報を送り出しており、この電気信号を受け取るのが、同じように細胞体から枝を出している樹状突起という、トゲのようなものです。ニューロン同士の結合部を「シナプス」というのは、みなさんよくご存知のとおりです。
ドーパミンやセロトニンなどの神経伝達物質がシナプスの間でやり取りされて、情報を次のニューロンに伝えていく仕組みを持っていまます。記憶、判断、注意、感情など脳のすべての活動を分解できれば、シナプスの活動に行き着くことができます。
まさに、このシナプスが睡眠中に増えたり、消えたりして整理されることで、残る記憶もあれば、忘れてしまう記憶も出てくるようになっているということです。
よく歳をとってしまうと、脳の細胞が作られなくなってしまって、どんどん活動が低下していく、のうようなニュアンスで語られることがあります。実際に、25歳頃をさかいに1日に失われていくニューロンの数が、生成されるニューロンの数を上回っていきます。旧来の研究では新しくニューロンは生まれないと考えられていましたが、最新の研究によるとおとなになってもニューロンは新しく生まれてくる(神経新生)というデータが、研究論文等を中心として多く発表され始めています。
歳をとってもニューロンは海馬で生まれています。海馬は、記憶や学習機能をコントロールする、いわば「記憶の司令塔」のような存在で、日常の出来事や学習して覚えたものごとは、海馬に送られて、一時的に保管されます。
この海馬でのニューロン新生に関する興味深い現象が、レム睡眠中に行われていることがわかりました。
情報のメッセンジャー的役割をしてくれる樹状突起は、レム睡眠のときだけ生み出されます。レム睡眠を効果的に取ることによって、脳の全体の働きに好影響を与えることが可能となると言っても良いかも知れません。
睡眠不足では、脳のいろいろな部分にさまざまなダメージをもたらします。
- ニューロンがぎっしり詰まっている灰白質の体積減少
- 神経線維が密に通っている白質の広範囲にわたる(よくない)変化
- 大脳皮質の広範囲にわたるニューロンの(よくない)変化
- 脳室の拡大(=脳の萎縮)
- などなど
睡眠不足は、脳にとってよくないことのオンパレードです。人間の脳は、一晩眠らないだけで1~2歳程度老けてしまうことも明らかになっています。睡眠には、意味があります。睡眠をしっかり取る前提で1日をすごすことで、よりよく身体をコンディショニングすることができます。
「人は眠るためにいきるのではない、生きるために眠る」
こちらの言葉は、著者である西多昌規さんが、セミナーや講演などの際に、締めくくりとして述べられる言葉だそうです。睡眠を考えることはすなわち生きていくことであると、連想することができます。より良く生きるためにも、よりよい睡眠を取りましょう。
また、睡眠からウェルビーイングを考えることも大切そうですね。というのも脳が萎縮してしまうと、それによって、社会的に孤立してしまうことの引き金にもなりうるからということもあるからです。睡眠というのは奥が深いです。
著者・西多昌規さん早稲田大学スポーツ科学科の教授でいらっしゃいます。詳しい研究のレビューについては、こちらからどうぞ。
まとめ
- 寝る子は育つ?――夜にしっかり寝る子ほど、育ちます。
- 風邪で眠くなる?――体内物質のせいで、実際に眠気を喚起させます。
- 睡眠不足で脳がしぼむ?――睡眠をしっかり確保できる生活習慣を再構築しましょう。
