- 戦略的であるとは、どういうことでしょうか。
- 実は、ものごとに仮説をもって取り組み、先んじて見通す力のことかもしれません。
- なぜなら、それが状況を主体的につくっていくことになりうるからです。
- 本書は、大前研一さんの名著『企業参謀』です。
- 本書を通じて、戦略思考家としてあるべき姿に触れます。
本書の成り立ちとは?
今回は、大前研一さんの著名な1冊である『企業参謀』をピックアップさせていただきたいと思います。1975年に出版されてから、半世紀!という長い期間、多くの方に読まれ続けている1冊です。本書の中で、大前研一さんは、ご自身のコンサルタントとして主体的にまとめられた戦略の考え方、ステップ、マインドセットに至るまで、事細かに描写してくださっています。
生々しい記述もあり、まさに業務ノートから書き出された1冊だなぁと感じることができます。実際、この本の成り立ちは、大前研一さんのノートであったといいます。
本書で印象的なのが、いかに本質的にものごとをとらえることができるか、そのためにどのような着眼点を持っていればいいのか、そして、そこから見出される戦略オプションをいかに選択していくかという一連の考え方を俯瞰できるとことです。
本書執筆の目的を大前研一さんは、次のように語ります。
戦略的思考家のグループの像を浮き彫りにすることを目的
1部
戦略的になろう!とか、戦略を考えよう!という言葉やよく飛び交いますが、なかなかその具体論にまでは言及しづらいのが実際ではないでしょうか。それをいくつかの事例も交えながら、明快に説いてくださる内容は、読む人のその時々の問題意識を反映して、常に新鮮です。
見立ての重要性とは?
イシューツリーや、プロフィットツリーなどの、戦略的フレームワークの詳細は、本書を拝読いただくとして、私が今回注目した点をご紹介したいと思います。
それが1970年代時点において、大前研一さんが多くのことを予期されていたということです。
1.低成長の永続
2.市場の成熟に伴う硬直化
3.経営資源の偏り
4.国際情勢の転倒
5.インフレの不可逆的進行
6.生産性の頭打ち
「5.インフレの不可逆的進行」のみ国際的には当てはまりますが、日本国内は依然デフレを脱却できていないという見方も多いため、やや△ですが、概ね大前研一さんの予期した世界観になっていっています。
ちなみに世界的なインフレについては、こちらの1冊「【なぜ、世界の物価上昇は止められないのか!?】世界インフレの謎|渡辺努」もぜひご覧ください。おすすめです。
成長社会から成熟・定常社会になっていく中で、新しいものがたりをわたしたちは常に探し続ける社会になっていっていると感じます。自らや組織の意志を見出し、そのことから新しい活動を主体的につくっていくことに喜びを見出したいことが、ある種、社会のキーインサイトのように流れているようです。
人口減少社会において、人がやるべき・やりたい仕事に集中するためにも、DXやデジタル活用なども常にフォーカスされています。一方で、ブルシット・ジョブと言われるムダ仕事はまだまだ多いのが現状でしょう。
私は、成熟し、硬直化した市場で、戦略的解決を見出す場合、まず対象となっている製品市場における常識に徹底的に挑戦する、という方法をとることにしている。
2部 第2章
「常識」の存在こそを疑いながら、変化を続けていくことの重要性を強調されています。成熟市場の硬直を突破していくのは容易なことではりませんが、やはりそんな時には、小手先の技を繰り返しているだけではダメで、抜本的に自らのマインドセットから覆していくことです。
パーパスの重要性とは?
また、大前研一さんは、現在のパーパスにつながる「なぜを問う」ことの重要性についても触れています。とくに企業戦略の立て直しにおいて、必ず必要になる最初のステップであると強調します。
なぜ事業を営むのか――本質的問い直し
2部 第2章
新しい環境の中で、生き続けていくために、「なぜ事業を営むのか」という大義名分を明らかにすることによって、迷いをなくすることができます。迷いから脱却することで、自然と自由な発想をとることができます。
具体的な戦略オプションを考え続けることもとても重要なことであると思います。ただ、改めて大前研一さんの『企業参謀』を拝読する中で、思うのは、なぜ事業を行うのかというパーパスの見つめ直しと、そこから自由な発想でトライを積み重ねていくということ。さらに、そうした活動をしていくためにも、これからの社会の趨勢を長い視点で見つめていく、という視野の持ち方の大切さです。
大前研一さんは、いまも絶えずこうした視点を更新されており、例えばこちらの1冊「【あなたには「波」が見えるか!?】第4の波 ~大前流「21世紀型経済理論」~|大前研一」では、スマホ社会の到来を予期し、準備することの重要性を説いてくれています。
まさに、企業活動や人の活動というのは、絶え間ないアップデートの継続であるということを、ご自身のご活動の中で示されているようです。
まとめ
- 本書の成り立ちとは?――大前研一さんの業務の中で記したノートが出自です。
- 見立ての重要性とは?――先手の読みで主体性を作ることができます。
- パーパスの重要性とは?――再認識することで、迷いを払拭し、思考に自由度をもたらします。