- どうしたらよりよいコミュニケーションを成すことができるでしょうか。
- 実は、ケアの現場にヒントを求めることが良いかも知れません。
- なぜなら、ケアの現場は、言葉だけによらない場所だからです。
- 本書は、何が本当のコミュニケーションなのかを考えるための1冊だと思います。
- 本書を通じて、いかに人と人がわかり合う可能性を持てるのか、その原点を知ります。
ケアとは!?
本書の著者の村上靖彦さんは、精神分析学・現象学者、大阪大学教授です。人をケアする現場(例えば、介護や、看護、終末期医療など)に入っていきながら、その中で見聞きした内容を捉えて、社会に対して発信し続けられています。ケアとは、人が人らしく生きることができることを目指す現場です。
こうした人の解像度が最も高い現場に触れることで、コミュニケーションであったり、あるいは情報や感情のやり取りだったり、そうした見立てを改めることが可能になります。
ケアとは生きることを肯定する営みだ。
1 サインをキャッチする
このように、ケアを村上靖彦さんは、描写します。たとえ、大きな苦痛や逆境の果に、定めとしての死に至るプロセスがあったとしても、生を肯定すること。
さらに、重要な視点は、ケアをする関与者は、自らの力だけで、相手の生を肯定することができない!という事実です。なぜなら、その生の肯定というのは、ケアする人も相手も実感できて初めて達成することであるからです。
サインを受け取ること!?
意識が薄れている人、身体が動かない人も、また何かを伝えようとしてくれています。指のかすかな動きかもしれないし、瞬きかも知れないし、それをキャッチする人がいる、という事実があれば、それがサインになるのです。
誰かに何かを発して、それが受け取られている状態が、プリミティブな意味でのコミュニケーションであり、とても重要なことです。
当事者のサインがなんとか受け止められ、試行錯誤のなかで対応されたとき、ケアが始まる。
1 サインをキャッチする
そばに立ち会って、つながりをつくること、そのことから始めてみましょう。当たり前のことのように思えてしまいますが、これがコミュニケーションの原点なのです。あるいはこうした当たり前のことをないがしろにして、単純に言葉を発していたり、ポーズをしていたりすることは、コミュニケーションとは言わず、単なる情報発信であるかも知れないということに気づきます。
ケアはつぎの4つの類型があります。
1.当事者からのサインをケアラーが感じ取る。
2.ケアラーから当事者にアプローチする。
3.当事者の位置にケアラーが立とうとする。
4.当事者と共に居る。
相手を見ないということは、相手が「存在していない」ということを暗に発信します。そうではなくて、相手のことをしっかりと見つめる、その先に、ケアとコミュニケーションが始まる兆しを見つめていきます。
「あなたはここにいるのですよ」と認めること、そのために、見て、感じることです。
人が人として存在するということに関わる。
1 サインをキャッチする
自立とは!?
ケアをしていくときに、同時に自立するという課題にも立ち会うことがあります。この自立とは何かということを考えていく時、熊谷晋一郎さんの言葉を思い出します。熊谷晋一郎さんは、医師、科学者として活躍される方で、専門は、小児科学、当事者研究です。
「自立」とは、依存しなくなることだと思われがちです。でも、そうではありません。「依存先を増やしていくこと」こそが、自立なのです。
5 チームワークで願いを叶える
すべての人に通じる普遍的なことであるし、ケアやコミュニケーションへの考え方を改めるうえでも、とても素敵な視点であると思います。
人は、一人では生きていかない生き物です。互いに支え合い、互いを写し鏡のようにしながら、自らを認識して、生をまっとうしようと考え続けていきます。
人との関わりや自分自身との関わりの原点を見つめていく1冊としてぜひ本書をおすすめしたいと思います。つながりを通じて生きていくことを東洋哲学を通じて深めてみても面白いかも知れません。こちらの1冊「【世界をガラリと変えよう!?】自分とか、ないから。 教養としての東洋哲学|しんめいP」もぜひご覧いただければと思います。
まとめ
- ケアとは!?――互いに生きることを肯定することを認めるアクションです。
- サインを受け取ること!?――人が発するサインを受け取ることから始めてみましょう。
- 自立とは!?――自立とは、依存先を増やしていくことにほかありません。