- どうしたら、閉塞感のある状況を打破して、より良い状態に組織を持っていくことができるでしょうか。
- 実は、単に危機感があるだけが重要ではありません。
- なぜなら、変革には、理想のステップがあるからです。
- 本書は、企業変革を導くコンサルタントとして活躍される宇田川元一さんによる1冊です。
- 本書を通じて、企業変革のスタンスと方法論を知ることができます。
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組織の抱えやすい問題とは!?
閉塞感の中で、これではない状態を打破しようとなにかしてみようと思うが、何から手をつけていいかわからない・・という経営者の方や事業責任者の方は少なくないのではないかと思います。実際に私が、中小企業診断士としてご支援させていただく方々も、悩みを吐露してくださるときがあります。
大切なのは、危機感だけを持っていても、ものごとを変える具体的な活動にはなり得ないということです。そのため、その危機感をエネルギーに、活動に変えていく方策が必要になります。
そして、誰か一人が、その危機感に苛まれていても、組織全体に波及し、組織全体がよりよく活動できるような状態を生み出していくためには、多くの人の巻き込みが不可欠になるということも事実です。
組織というのは、不合理なものです。一人ひとりはそれぞれの領分において正しいことをしているにも関わらず、全体としては、悪い方向へと向かって、成果が出なかったり、あるいは、組織自体の求心力が低下していくこともあります。こうした事実を目の前に、いかにしたら、組織が自らを健全に保ち続け、日々ポジティブな方向へ向けて変わり続けていくには、どうしたらよいか、ということを考えてみることが大切になります。
なぜ、一人ひとりは悪人ではないのに、結果として、多くの人々の命が失われたり、人生に消せない傷を残すようなことが起きてしまうのか。
組織の複雑な問題の紐解く
組織が成果を出せないのは、誰か明確な悪意を持った人がそれを妨げているからではないのです。善良で、善管注意義務を負った人が、一生懸命がんばることで、成果を出せていない状況を作っているという事実を直視しましょう。この問題は複雑です。ドラマのように、「この人が悪役ですよ!」「この状況が最悪ですよ!」という明確なアラートが出ていないのです。
本書が定義する企業変革とは次のようなものです。
企業変革とは、経営層、ミドル層、メンバー層によらず、組織に集う一人ひとりが、考え、実行する力を回復すること、そしてそれぞれが、その企業をよりよいものにしていけるという実感を持てるようになることである。
組織の複雑な問題を紐解く
変革とは、経営を回復することです。企業という共同体は、人々に位置と役割を提供する存在です。その上で社会を機能させる基盤として一定の役割を果たし続けていくことが求められます。こうした本来的な役割を素直に果たせるために、成員一人ひとりの行動を正しく取りまとめていく思想と方法が必要です。
3つの論点とは!?
変革に向けた論点は、次の3つです。
3つの論点とは、「多義性」「複雑性」「自発性」である。
本書の構成と考え方
多義性とは、ある状況について複数の解釈が存在する状態を指します。この多義性を認める姿勢は、企業の底力に関わります。例えば、低価格を武器に盤石のサービスプラットフォームを提供する自社に対して、新興勢力のA社が新規参入を狙っているという動きをキャッチしたとします。「よくある新興勢力の参入で、考慮するに値しない」と意味付けがなされる場合、多義性は認識されません。一方で、「もしかすると自社の事業を脅かすかもしれない」という解釈も生じた場合、多義性があると認められます。
背景で起きていることは何なのか、そこに想像力をふくらませるための意義意味を知ることです。リスクや新たな事業機会を見つめるヒントはそうした、目に見えない領域分野に広がっています。
表層的な問題の背景には、複雑な問題があります。その深みを特定することなく、個別の問題が解決することはありません。大切なのは、対処療法的なアプローチではなく、根源的な原因と向き合うスタンスです。本書では、この点を「問題の二重性」と捉えます。具体的なお困りごとの背景には、さらに根深い問題の原因が2重構造のように、奥行きを持っていると捉えるのです。
ただし、これが難しいのですが、組織には、認知的な慣性力が働きます。これまでも大丈夫だから、これからも問題ないというような考え方をいかに、打破できるかが、キーになります。
複雑性とは、あるものごとに対して、複数の現象が絡み合っていることです。特定の問題に対して、どのような解決策があるのかを把握しづらくします。
企業変革の取り組みでは、現状の多義性を認知し、目に見える問題の背後にある、より複雑な問題について見定めようとする際に、この複雑性の問題に直面する。
(2)複雑性――「進まない」壁を乗り越える
例えば、DXを果たしたい場合を考えてみても、複雑性はすぐに想定されます。変革を推進したい部門と、実際に変革を実行する部門は、別の部門であることが多くあります。それぞれがそれぞれの課題感のもと、日常の業務にあたっているために、コンフリクトが起こりがちです。こうした衝突を解決するのは、当事者同士では、困難です。さらに上位にレイヤーから、指摘や指示を落とし込み、推進する活動に意義意味を共有できる環境整備が必要になります。
ここで大切なのが、「なぜ、それをやるのか」という当社にとっての意味付けです。さらに、「その奥行には、そもそもなぜ当社が存在しうるのか」という意義意味もセットで検討しておく必要がなければ、目的がない手段だけを強調することになり、本質的な実行力を担保することは難しいでしょう。
自発性とは、変えられない壁を乗り越える力です。目の前で起きている問題からスタートさせます。その問題を認識し、どうしたらいいのかを一人ひとりの組織の成員が検討し続けることが大切です。そのためには、「対話」の力を借りてみたいところです。
人類学者の山口昌男さんは、対話とその効用を次のように見出します。
己の価値で他社を測るのではなく、他者を媒介して己を量りなおすところにある
山口昌男――人類学者
すぐれた人類学とは何か、について、語られた1文ですが、人類学は他者との出会いを大切にするフィールドワークという手法によって構築されるため、ある種、対話に対する示唆であると捉えることもできるはずです。
対話については、非常に示唆がありますので、次回の投稿でも詳細をレビューさせていただきたいと思います。
いずれにしても、対話を通じて、いろいろなことを知り、試行錯誤を重ねる中で、少しずつだけれども、主体的に何かを変えていく力を養っていくことが企業の変革にあたっても重要な活動となります。
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4つのステップとは!?
企業変革については、次の4つのステップを円滑に実践していくことがキーになります。
1)全社戦略を考えられるようになる。
2)全社戦略へのコンセンサスを形成する。
3)部門内での変革の推進を行っていく。
4)全社戦略・変革施策へのアップデートを行っていく。
これらのステップはどこからスタートしても構いません。
その際は経営層がイニシアティブを取ることが望ましいが、考える材料がなければそれを実現することは難しいため、考える材料が揃うように、下から働きかけることも大切だ。
④全社戦略・変革施策のアップデート
企業変革については、こちらの1冊「【リーダーは、「3人」必要!?】組織変革のビジョン|金井壽宏」もぜひ御覧ください。おすすめです!
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まとめ
- 組織の抱えやすい問題とは!?――一人ひとりのレベルだと善い行いが、全体として必ずしも和や掛け算にならない事象が起きやすいです。
- 3つの論点とは!?――多義性、複雑性、自発性と向き合ってみましょう。
- 4つのステップとは!?――変革のステップをまず、進めてみましょう。
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