- どうしたら追いかけてくるタスクと正しく向き合うことができるでしょうか。
- 実は、「怠惰」の捉え方を変えてみることかも。
- なぜなら、そもそも人は「怠惰」的状況を享受するために生まれてきているかも知れないからです。
- 本書は、いわゆる「怠惰」を悪とする社会を指摘する1冊です。
- 本書を通じて、自分が求める時間の使い方に素直になるヒントをたくさんもらえます。

怠惰のウソ!?
怠惰は本当に悪いことなのか、というアンチテーゼを説くこちらの『「怠惰」なんて存在しない 終わりなき生産性競争から抜け出すための幸福論』をレビューさせて頂きたいと思います。
誰もが、勤勉であることを説きます。もちろん、勤勉は大切なことです。何かに、熱心に、そして真摯に取り組むことは、自らの成長にも繋がりますし、たがいにつながっている社会全体のより良い状態を目指すためには、一人ひとりが確実に意識しておきたいことです。
しかし、あまりにステレオタイプな勤勉は、どうでしょうか。もっというと、怠惰=無価値というふうに否定する風潮にまで行き着くと、どうも、生きづらい世の中になってしまうようです。
実際に、多くの人が精神疾患等を患って社会や会社からドロップ・アウトしていく現実があります。社会があるべき姿を個人レベルにまで落とし込みすぎているから、こうした減少が加速しているのかも知れません。
著者のデヴォン・プライスさんは、社会全体に蔓延している苦しみを生み出す根源を「怠惰のウソ」と呼びます。次のことを私たちに、信じ込ませようとしてきます。
- 表向きはどうであれ、本質的に自分は怠惰で無価値である。
- 怠惰な自分を克服するために、いつも一生懸命頑張らないといけない。
- 自分の価値は生産性で決まる。
- 仕事は人生の中心である。
- 途中でやめてしまうこと、頑張らないことは、不道徳だ。
こうした、いわゆる社会の構成員として当たり前だとされているような風潮に意義を唱えるのが、本書の目的です。
「怠惰のウソ」には、次の3原則があります。
1.人の勝ちは生産性で測られる。
2.自分の限界を疑え。
3.もっとできることはあるはずだ。
いかがでしょう、土日にゴロゴロしている時間に、頭の中の小さな自分がささやき出しそうな言葉たちです。こうした考え方はどこからやってきたのか・・そして、それだけがこの社会の、あるいは、自分の人生にとっての本当に正解なのであるのか・・今一度考えてみても良いかも知れません。
誰もが信じていることこそ、危ないことはないのかも知れません。
私たちの文化は、「怠け者」を毛嫌いしている。
「怠け者」を嫌う文化
「怠惰のウソ」は私たちに、もっと多く、もっと長く、もっとたくさんの仕事をするように働きかけてきます。そして現実離れした毎日を気づけば過ごしてしまうように仕向けるのです。さまざまな条件は、変わらないのに、自らそうした状態へ導いてしまうのが、現代社会の風潮の怖いところでしょう。
ちなみに、こうした状況を資本主義から照らして考察したこちらの1冊「【自己内利益を考え、積み上げる人生を送れ!?】人生格差はこれで決まる 働き方の損益分岐点|木暮太一」も大変刺激的で、おすすめです。ぜひご覧ください。

怠惰は、人間の性(さが)!?
そもそも「時間の無駄遣い」は、人間の基本的な欲求ではないでしょうか。
この事実を受け入れて、健やかで楽しく、バランスの取れた人生を始めよう。
なぜ怠惰な気分になるのか?
自分の怠惰な本性を恐れなくてOKです。むしろそれは、人間の証。せっかく生まれてきたのだから、ダラダラする時間も楽しんでみましょう。
そのためには、生産性への期待値をぐっと引き下げることがキーです。頑張りすぎたり、ストレスを感じてもやめられないのは、まだまだ足りない!もっとたくさんできるはず!と無謀な目標のまま邁進してしまうことに原因があります。一定の負荷をかけた場合、人は、睡眠をしっかりとったり、休憩したりする必要があるのです。(当たり前のことです!)
集中は限られた資産です。こちらの1冊「【自分に固有のリズムをつかめ!?】ATTENTION SPAN|グロリア・マーク,依田卓巳」もあわせてご覧ください。時間ではなく、集中資源をいかに配置するのかについてヒントを得ることができます。

こうした余裕を生活の中に確保することを意識してみましょう。思考と感情エネルギーを充電し、ゆたかで余裕のある生活を確保するために、休息をしたり睡眠を取ることは大切なのです。
自分に本当に必要なことを差し置いて、他のみんなのニーズを優先してしまってはいけません。まずは自分が幸福を感じられるくらいの条件を先に検討しておくことです。自分をないがしろにしても、相手や社会のためになることをするというのは、結果的に、全体のためにならないのです。持続可能ないいバランスをいかに見出すことができるかです。
ときに、日常生活を送るときに「何もしたくない」という気持ちに襲われることがあるでしょう。普段の生活の中で生理的欲求などの心身のニーズにうまく対応できていないときに、そのサインとして現れることが多いです。こうした状況をほうっておくべきではありません。身体はよくできています。自分のサインを見逃すことなく、不足しているものを補給しましょう。

共感の力で想像力を!?
何もしないことは、数世紀にわたって悪者扱いされてきましたが、これは何も悪いことではないし、有害でもありません。
サボりは人間の標準仕様であり、頭をスッキリさせて健やかにいるためには働かない時間が必要なのだ。
怠惰は、心身の警告信号
この怠惰が発信してくれる信号にきちんと耳を傾ければ、自分の欲求がもっと理解できるようになり、本当に価値のある人生をおくることができるようになります。
クリエイティビティや、発想力は、頑張れば出てくるものではありません。
何もしない時間を持つことはとても大切だと言えるでしょう。往々にして、良いアイデアは何もしていないときに降りてきます。シャワー中や散歩のときなどが好例です。私たちは何もしていない時間にアイデアを、無意識下で練っているのです。この生産的な休養期間を心理学では「インキュベーション期間」と呼びます。
卵から健康なヒヨコが生まれてくるには、暖かくて安全な場所が必要であるのと同じよに、ユニークなアイデアや視点を生み出していくためには、脳の創造性を担う部分に、安心、休息、リラックスを与える必要があります。
「怠惰のウソ」に抗っていくためには、まず自分自身をよく観察することです。
- 決められた目標を達成できなかった場合、やる気の無さや怠惰がどう影響したか?
- ゆとりのある時間を持つことの意味を自分自身がどう考えているのか?
- そもそも心身からどんなサインが出ているか、「何もしたくない」と思えることに素直に従っているか?
などの問いを通じて、自らの状態を俯瞰してみましょう。
自分自身の行動や感情をしっかり観察し、自分を責めずにそこから学ぶようにすれば、より自分らしい生活を送り、人生を満喫できるはずだ。
怠惰の声を聞く
人間の注意力は限られたリソースであることを知りましょう。使えば減ってしまうのです。それを無視して、1日に8時間、10時間、12時間と仕事をしているかのような時間を過ごしても、生産性は極限まで0に近くなります。自分には、限界があるのであるということをよく知ることです。頑張れば何でもできるとは、あくまで中長期的な期間でものごとを捉えた時だけの話です。
何より大切なのは、「生産性」以外にも、人生を構成する価値観はあるということを身にしみて理解することです。幸福というのは、「生産性」だけがもたらすものではありませんね。いまここで感じられる満たされた気分が幸福です。今一度、そうした考えの転換を行うことで、「怠惰のウソ」と一定の距離を取りながら、自らの人生を構成するマインドセットを整える活動を積み重ねることができるようになります。
自分の怠惰を認めることができれば、次に相手の怠惰に共感することです。
社会に教え込まれてきた「怠惰」への偏見をすべて疑うことだ。
[結び]共感で「怠惰のウソ」を終わらせる
頑固に染み付いた怠惰の先入観を捨て去るには、共感が有効です。例えば、ホームレスの人やうつ病の人で何もすることができない人、あるいは、薬物中毒者の人を責めるのではなく、何がそうさせたのかにフォーカスし、一人ひとりの人として共感をしてみることです。怠惰であるというフィルターで人を切るのではなく、周囲の環境や状況を含めて、見つめる視点が大切なのかも知れません。
生産性に関係なく自分の人生には価値があるのなら、どんな人の命にも同様の価値がある。
[結び]共感で「怠惰のウソ」を終わらせる
そうやってすぐに相手を否定せずに、好奇心を発揮してみることです。そのほうがずっとうまくいきます。どんな行動にも結果にも、その人なりの(あるいは、その人が置かれた環境なりの)理由があります。それが、無意味で自滅的にしか見えなくても、その人の人生の文脈では意味のあることです。
独善的に決めつけるのではなく、じっくり考えてみることです。こうした、考え方や視点が自らの態度を見つめることにつながっていきます。
- このような行動で、相手はどんな欲求を満たそうとしているのだろうか。
- 相手が変化を起こすうえで、どんな障壁や問題があるのだろうか。
- こちらには見えない困難(身体障害や精神疾患、トラウマ、抑圧など)に苦しんでいるのではないだろうか。
- このように行動するように誰かに教わったのだろうか。
- 相手に他の選択肢はないのだろうか。
- サポートが必要だとすれば、どんな形が適切なのだろうか。
このように引いて俯瞰的に考えるのは、自分自身の悩みにも有効だ。1日にやることの目標が達成できなかったとき、自分の怠惰さを責めるのではなく、自分のペースを落とすような出来事が人生に起きているのではないかと考えてみよう。
[結び]共感で「怠惰のウソ」を終わらせる
誰もみんな、愛や安らぎを得る価値があるし、その価値は生産性とは関係ない、と納得できると、不思議と気分が良くなるものです。
まとめ
- 怠惰のウソ!?――怠惰=悪という決めつけが社会に蔓延しています。
- 怠惰は、人間の性(さが)!?――人間はそもそも怠惰な生き物なので、自己否定はNo moreです。
- 共感の力で想像力を!?――相手の置かれた立場と環境を理解する視点は、自らにもフィードバックされます。
