- 社会が変革する今、教育はどうあるべきでしょうか!?
- 実は、一度、日本の教育の成り立ちから知ることが重要かもしれません。
- なぜなら、原型ができた当時と今とでは、社会のあり方がまったく異なるから・・
- 本書は、勇敢なリーダーシップにより学校を変革した1人の校長先生の物語です。
- 本書を通じて、教育はいかにあるべきか、そして、変化イノベーションとはどのように起こしていくものなのかを知ることができます。
忠犬ハチ公製造システム!?
本書の著者である日野田直彦さんは、大学卒業後、進学塾、私立中高の新規立ち上げ、公立・私立の校長先生とほぼあらゆる教育現場に携わってきた方です。校長として改革に挑んだ、大阪府立箕面高等学校では、地域の4番手の「普通」の学校の生徒が海外大学に多数進学し、注目を集めました。また、武蔵野大学中学・高等学校では、定員割れ、予備校が出す偏差値が「判定不能」、9年で5人も好調が交代する倒産寸前の状態からV字回復を果たしたといいます。
そんな日野田直彦さんが、日本の教育の難点をつきます。
そもそも学校とは、産業革命以降の発達した資本主義社会のなかで、資本主義が活動を維持するためのシステムとして生まれました。労働力を大量供給するために必要だったのです。
都市部には工場ができて、農村部から大量に人々が流入します。工場には、読み書きそろばんができる労働者が大量に必要になります。
その知識を授ける場として学校教育は普及しました。
忠犬ハチ公を生産する学校
ただし、労働者が賢くなりすぎて自立されては困ります。賃上げや労働時間短縮などの要求を資本側にされては、困るのです。資本家は、大人しくて従順でよく働く労働者を求める・・だから、学校では校則を厳しくしたりして、先生の言うことをよくきく「忠犬ハチ公」のような犬(労働者)を生産するシステムを作りました。
これが近代の学校の原点でもあり、現在でも少なからず受け継がれている、義務教育のカルチャーです。
社会のルールを守るのはたしかに大切です。しかし、日本の学校ではそれが著しいです。日本の教育では個性を出すと嫌われます。
「いえない」「いわない」「いわせない」
それでも優れている日本の教育!?
個性を一定以上消さなくては、学校の中に存在することができません。生徒も先生も、個性を消しながら、数年間を過ごしているうちに、自分の本当の個性を見失っていきます・・。
とはいえ、日本の教育には優れた面もあります。
日本人や日本社会が優れているのは、人々の能力が均質化していることろです。
日本と世界のいいとこ取りが最適解
自由があまりない反面、読み書きや計算ができない人はほとんどありません。
これについては、過去の投稿「【「常識」を疑うために・・!】日本の死角|現代ビジネス」でも指摘されていましたので、あわせてぜひご覧ください。

海外では、一部の富裕層のみが、高度な教育を受ける「権利」を保有し、社会全体での教育格差が普通に存在する状態が続いています。日本と海外の、この教育の差をいかにとらえるのかがポイントです。
いまの日本の学校では、模擬試験の成績の良い生徒は育てられますが、リサーチやクリティカルシンキングの力を身に着けさせる教育はできません。こうした学校には多様性も当然ありません。みなが、おなじ目標である「成績」や「偏差値」を求めているのですから・・
社会は大きな物語を失って久しいのに、まだ教育は、「大きな物語」で子どもを育て続けています。社会に出る時にもっとも苦労するのは子どもです。個性を消せと言われ続けていきたのに、今度は個性がないとダメだと突きつけられるのです。
変革に必要なマインドとは!?
日野田直彦さんは、現状バイアスに立ち向かい、先生や生徒を味方にしながら、既存の学校を変革して続けています。
大切なマインドセットは、グロース・マインドセットだと言います。これに対する、フィックスト・マインドセットをご紹介します。
グロース・マインドセットとは、成長思考のことです。現状を打破したいと考えるクセを持っている人のことを指します。
安定を求めるがあまり、安定的な行動をしていては、それは維持されることはありません。なぜなら、社会や環境が変わり続けているから、自分に変化がないということは、外的環境から相対的に遅れやマイナスの変化が伴う可能性もあるからです。止まっていることは、物理法則からしても不安定であるとも言えるのです。
こうした、固定的なマインドセットが、フックスト・マインドセットです。
グロース・マインドセット | フィックスト・マインドセット | |
マインド | ひたすら学び続けたい | 自分は有能だと思われたい |
知性や能力 | 才能は磨けば伸びる | 才能は生まれつきのもの |
努力や挑戦 | 貪欲に挑戦したい | できれば挑戦したくない |
失敗 | 学びや変化の機会ととらえる | 失敗や変化を恐れる |
フィードバック | フィードバックから真摯に学ぶ | ネガティブな意見は無視する |
他人の成功 | 学びや気づきを得るもの | 脅威に感じる |
グロース・マインドセットは、成長が促進され続けます。一方、フィックスト・マインドセットは、成長にブレーキがかかります。
こちらの1冊「マインドセット:「やればできる!」の研究」からの出典です。
当たり前を当たり前として受け入れ続けるのではなく、社会に存在する1人1人が、より良い方向へいくにはどうしたら良いのだろうかと「問い」続けることが、よりよい方向への変革のムーブメントをもたらすのかもしれません。
私は何者か・・という「問い」も大切になります。日野田直彦さんが海外に行くと、よく次のように矢継ぎ早に質問されると言います。
Who are you?── 海外に行くと、必ずといってよいほど、そうきかれます。
・・・
「What’ s your story?」(あなたの物語は?)
「What’ s The Contribution that only you can make?」(あなたにしかできない貢献は?)
「How do you see The World ?」(あなたはこの世界をどう見ている?)
ゴーギャンの絵画のタイトルのような「問い」を常に感じながら、私たちは、新しい一歩を踏み出せるのかがポイントなのです。
東大に合格さえすれば、幸せな未来が待っている、そんな幻想、社会との不整合をいかに是正して、ひとりひとりの個性を大切に育める教育やそれを活かせる社会のあり方を考え続けていきたいと、心から思いました。
まとめ
- 忠犬ハチ公製造システム!?――近代化時代のシステムのままです。
- それでも優れている日本の教育!?――読み書き計算の平準化ができていますが、「自由」「個性」を失わせてしまっています。
- 変革に必要なマインドとは!?――成長し、変化し続ける覚悟です。