【なぜ、やり過ごし社員の評価が高いのか!?】できる社員は「やり過ごす」|高橋伸夫

できる社員は「やり過ごす」
  • ヒエラルキー型の組織の中でのびのび生きるようになるためには、何がポイントでしょうか。
  • 実は「やり過ごし」を上手に使うといいかも。
  • なぜなら、日本の伝統的組織は「やり過ごし」前提でなりたっているからです。
  • 本書では、東大助教授である高橋伸夫さんが、独自の研究で見出した組織のリアルを説いています。
  • 本書を通じて、理論だけによらない日本組織の実情が見えてくると思います。

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高橋伸夫
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どれだけの社員が「やり過ごし」ているのか!?

「やり過ごし」とは何でしょうか!?やり過ごしとは、「指示が出されても、やり過ごしている内に立ち消えになる」ような業務のことです。とくに上司から部下への指示で、「やり過ごし」は頻発します。みなさんにもそういう経験はありませんか!?

高橋伸夫さんの研究によると、少なくとも半分以上の社員が「やり過ごし」を経験していると言います。

「指示が出されても、やり過ごししているうちに、立ち消えになることがある」と答えた人が、じつに66.3%もいるではないか。どの会社でも、50%を超える人が「やり過ごし」の存在を認めていた。

できる社員は「やり過ごす」

「やり過ごし」前提の組織とは!?

なぜ、「やり過ごす」ことが可能となるのか、それは組織に潜むあいまい性にあります。

わたしはこれをつぎのように「上司の(態度の)あいまい性」「仕事(指示内容)のあいまい性」のふたつの要因に整理してみた。

できる社員は「やり過ごす」

上司のあいまい性には、たとえば、「上司の知識不足」や「指示の目標が明示されない」などがあげられます。一方で、仕事のあいまい性には、「複数の部署からほぼ同時に指示されることが多く、しかも部署によって指示内容がバラバラ」とか「直接の上司以外からの指示がくる」などがあげられます。

いずれも、組織内には潜んでいるあいまい性です。そして、これらのあいまい性に対してあまりに実直に対応することを、組織は前提としていないようでもあります。

事実、「やり過ごす」社員の方が高評価なのです!高橋伸夫さんが調査した「評価される社員」の特徴はこちらです。

A評価・・・やり過ごしもふくめて上司の指示・命令をみずからの判断で優先順位をつけて遂行し、必要に応じて指示されないことまで自主的におこなって、つねに時機に応じた解決策を提示する部下。

できる社員は「やり過ごす」

と、書いてみて、わかるのですが、かなり権限委譲されているニュアンスの働き方をする部下です。こうした部下は組織はそもそもあいまいなものであるという認識のもと、主体的に仕事を作っていこうという意識が強いのでしょう。そして、組織の言いなりになる人間とは一線を画しているようです。

なぜ「やり過ごし」が許容されるのか!?

そもそも、なぜ、このようの組織はあいまいなのか、そしてその上で、なぜ「やり過ごし」が発生し、許容される風土がありうるのかという疑問に至ります。ちなみに、これは高橋伸夫さんの研究の面白さなのですが、「やり過ごし」に並んで、「尻拭い」「泥かぶり」もおなじ理由から許容されるといいます。

「やり過ごし」「尻拭い」「泥かぶり」、なんだか日本的だなと思いますか。実は、そうなんです、これら3つは日本的組織に見られる「未来傾斜原理」にもとづき発生するのです。

未来傾斜原理とは、わかりやすくいえば、過去の実績や現在の力関係よりも、未来の実現への期待に寄りかかって現在の意思決定をおこなうという原理である。

できる社員は「やり過ごす」

高橋伸夫さんは、日本人と欧米人とを比べて、日本人の方が「未来係数」つまり、未来が必ずくるであろうと期待する数値が高い傾向にあるという。「未来係数」が高いので、つきあいがいつまでも続く世界と表現してもいいかもしれないです。未来が割り引かれることなく、現在にもまして重要性を帯びる世界です。この世界では、現在よりも、「末永いお付き合い」への期待値が極めて大きくなります。

われわれの多くは、じつは未来係数のそれほど大きくない状況にあってさえ、未来傾斜原理にのっとって、意思決定をしようとする。

できる社員は「やり過ごす」

自分が定年を迎える頃には、会社がなくなっているのかもしれないのに、日本人は未来傾斜原理に知らず知らずのって判断していると高橋伸夫さんは言います。

この本が執筆されたのは1994年の頃で、バブル崩壊後、日本企業の立て直しが行われていた頃です。いま2022年においては、さらに柔軟な働き方が提示されているのですが、少なからず、こうした原理に基づく組織風土は残っていると思われます。

しかし、今後例えばJOB型の働き方などが、浸透する中で、こうした風土はどのようの変化してくのか、客観性をもって見つめていくのも良いのかも知れません。これからの働き方については過去の投稿「【これからの働き方の羅針盤!】ニュータイプの時代|山口周」がとてもおすすめです。

まとめ

  • どれだけの社員が「やり過ごし」ているのか!?――実に半数以上の社員が「やり過ごし」を経験しています。
  • 「やり過ごし」前提の組織とは!?――あいまい性に満ちた組織の中で、「やり過ごし」も許容されます。
  • なぜ「やり過ごし」が許容されるのか!?――わたしたちが、多くの場面において「未来傾斜原理」にもとづき、現在よりも未来へ期待する働き方をしているからです。

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