- 問題が減っている時代、そもそもの問いを立てることがポイントです。
- 実は「現代アート」とのふれあいが、この問いを磨くことにつながるかも知れません。
- なぜなら、アートこそ新たな問いを世の中に提示するように生まれてくるからです。
- 本書は、東京藝術大学大学美術館館長・教授でもあり、直島でのプロジェクトでのコディネータでもある秋元雄史さんが、現代アートとビジネスの架け橋について語ります。
- 本書を通じて、常識を疑う視点を持つヒントを得ることができるでしょう。
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アート思考と問いとは!?
コロナ禍前から、アート思考が、にわかに脚光を浴びていました。とくに、きっかけとなったのは、山口周さんによる『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?~経営における「アート」と「サイエンス」~』であったように記憶しています。2017年7月に発刊されています。

今回取り上げる本書『アート思考――ビジネスと芸術で人々の幸福を高める方法』は、そこから2年後2019年の発刊。アート的な思考とビジネス的な思考のさらなる橋渡しを目的に、執筆されたとあります。
そもそもアート思考とは何でしょうか。同じようなビジネス思考法である、デザイン思考と比較してみます。
デザイン思考は、顧客の抱える問題を解決に導くためのもので「自分がどうしたいか」ではなく、「顧客のベネフィットのためにはどうすればよいか」を考えるものです。
デザイン思考とアート思考
そして、アート思考は、
アート思考は「そもそも何が問題なのか」という問題をつくり出し、「何が問題なのか」といった問いから始めるのが、特徴です。
デザイン思考とアート思考
です。
起点が異なるのです。前者のデザイン思考が、顧客であるのに対して、アート思考は、それを超えて社会・世の中全体を見通した上での問い立てがポイントになるということでしょう。もちろんその中には、結果的に顧客が紛れ込んでくるイメージだと思います。
私も、広告代理店のプランナーとして仕事を当たる上で、社会・企業・顧客の3分野を行ったり来たりしながら、得意先ビジネスにひとつの仮説をご提示させていただくことを毎日の業としています。案件によって、顧客起点が望ましいのか、あるいは、社会視点が望ましいのか、の軸足はあるにせよ、すべての要素を行ったり来たりするほうが、より本質的な問題にたどり着けるのではないか、という感覚はあります。
問いを見つけよ!という見解ですが、では、どうしたら「そもそも」の問いを見つけることができるのでしょうか。
問いを見つけるセンスの磨き方とは!?
最初にするべきことは、あなたの曇った目を取り除くことです。
「問い」を見つけるセンス
自分がそのまま世界を認識できているはずだ!と、思っていること自体が、勘違いであることに気づく必要があります。かならず、ものごとを見る時、わたしたちはそのものをそのまま見ることができていません。それは身体的な影響かも知れないし、文化的な影響かも知れないし、あるいは、現在の自分の社会的な立場の影響かも知れない。とにかく、ものごとをそのまますべて見て、そのままを受け入れることなど到底できていないのです。
これを人は時に「常識」と呼びます。この常識の壁は厚く、なかなか超えることができないものですが、そもそもの問いを立てるときには、この「常識」を意識的に見つけて、眺めてみる姿勢が必要にあるのです。
そして、この「常識」を外側から捉えるアクションも行っているのがアーティストだといいます。
アート鑑賞で問いを磨け!鑑賞の着眼点とは!?
アート鑑賞は、私たちにそもそもの問いを見立てる力をくれます。アートは、わからないものだからです。でも、そのわからなさの奥に、芸術家の問いがひそんでいるのです。
ただし、それをわかろうとするプロセスの楽しさが、現代アートの魅力ともいえます。「わからないから、つまらない」ではなく、「わからないから、面白い」のです。
わからないから面白い
情報化社会の中で、いかに早く大量の情報を摂取して、判断を下すことが優勢となってしまいました。結果的に、「わかりやすさ」がひとつの良い基準として語られることが増えている気がしています。
私も、会社でよく「わかりやすい提案だった」とか「これは、わかりにくい」という言葉を聞くのですが、どうもしっくりこない時がある。たしかに、私たちはサービス業である以上、得意先や顧客にとって分かりやすく説明をして、その上で対話を構築していく姿勢はたしかに必要です。しかし、それはあくまで、対話のための前段階であって、その内容に対してまで「わかりやすさ」が必要なのか、というとそうでもないのではないかと思ってしまうのです。
わかるというのは、2分する、白黒着けるという意味ですが、実は、「わかりやすい」といって英断してしまう前にこそ、新たな突破口を見出すことができる、ヒントがあったのではないかと、臆病になってしまうこともあります。
わかりやすさ優位の時代において、現代アートは、わかりにくさのオンパレードです。
たとえば、マルセル・デュシャンの『泉』という作品は、男性用の小便器にサインをして、タイトルを付けただけで、それが世界の認識を変える極めて重要な現代アートと呼ばれているのですが、それはなぜだと思いますか?この「わかりにくさ」に解釈を持つことが、鑑賞です。
現代アートを鑑賞すること自体が、もしかしたら、わかりにくさや複雑系への耐性を着けることになるのかも知れません。じっくり向き合う中でもしかしたら、ネガティブ・ケイパビリティを養うことにもなるのかも。ちなみに、ネガティブ・ケイパビリティについては、過去の投稿「【焦るな!耐えろ!】ネガティブ・ケイパビリティ|帚木蓬生」がおすすめです。

現代アートの特徴は、「深く感じ、考える」という傾向を重視することです。歴史的、哲学的な見方を大切にして、大きな物語に自分を関係づけようとする一方で、一人の人間の目の前の現実を無視しない、例外にしない、そんな両者が成り立つ「解答」を見つけようとします。
常識を疑う、ゼロベースで考える
現代アーティストの杉本博司さんへのインタビューをもとにして、現代アートに明るい小崎哲哉さんは、現代アートの成り立ちを3つに整理してくれています。
それを「インパクト」「コンセプト」「レイヤー」という言葉にして、現代アートを構成する三大要素と定義しました。
インパクト、コンセプト、レイヤー
これらを意識しながら、現代アートの問いをうけとる思考に挑戦してみても良いかも知れません。
- インパクト:作品の見た目のことです。どんなオリジナリティや個性をそこから感じますか?
- コンセプト:どんな考えに基づいてこの作品は成り立っていますか。何がメッセージなのでしょうか?
- レイヤー:そのメッセージから解釈されることは、どのようなものでしょうか。たったひとつの解ではなく、複数織りなす解釈が得られるかも知れません。
まとめ
- アート思考と問いとは!?――社会・世の中に対する「そもそも」の問いを持つことです。
- 問いを見つけるセンスの磨き方とは!?――あなたやあなたの文化の「常識」に客観的になることです。
- アート鑑賞で問いを磨け!鑑賞の着眼点とは!?――インパクト、コンセプト、レイヤーを意識してみましょう。
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