【家族とはなにか?】縁食論|藤原辰史

縁食論
  • 孤食、食品ロス、栄養過多、栄養失調、食にまつわる問題は尽きることがありません。
  • 実は、これらの食にまつわる問題を考えることは、社会への眼差しを養うことにつながるかもしれません。
  • なぜなら、食は人間の活動の中でも根源的なものであり、私たちの暮らしの単位を考えるのにもっとも身近な活動だからです。
  • 本書では、「孤食」の問題を「共食」で解決しようという風潮・価値観に、一石を投じるかたちで、食の思想家である藤原辰史氏が、「縁食」という3つ目の軸を提案します。
  • 本書を読み終えると、いまあたりまえのように話題に登る社会やそれを構成するミニマムな単位である家族について、新しい着眼点を得ることができるでしょう。
藤原辰史
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「孤食」の問題とは?

家族で食べたいけれども両親ともに夜遅くまで働いていて両親と食べられない子どもたちが夜、テレビを観ながら電子レンジで温めて夕食をつつくことが、「子どもたちがかわいそう」という感情を伴いつつ問題視されてきた。しかしこのような物言いのときに注意すべきなのは、人々の批判の矛先が、両親、とくに母親に向かい、親を過程に返さない職場や、夜遅くまで働かざるをえないほど法外な賃金の低さを許す社会にはなかなか向かないことである。

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農林水産省の調査データによると、「週の半分以上一日の全ての食事を一人で食べている「孤食」の人は、約15%」だそうです。しかも、平成23年(2011年)から、平成29年(2017年)にかけて、「一日の全ての食事を一人で食べる頻度」は上昇傾向にあります。

これは、なにも子どもに限ったことではなく、シニア世帯でも深刻だそうです。

一人で食べたくないが、仕方なく「孤食」になってしまう背景として、世帯構造の変化があります。単独世帯や夫婦のみの世帯、ひとり親世帯の増加により、誰かと一緒に食事を共にする機会が得られなかったり、少なかったり、食事を通じたコミュニケーションや豊かな食体験が期待しにくい状況もみられます。(中略)

特に、65歳以上の高齢者では、一人暮らしの人の割合が増加しており、平成27(2015)年は男性高齢者の13.3%、女性高齢者の21.1%が一人暮らしでした。2040年には、男性高齢者の20.8%、女性高齢者の24.5%が一人暮らしであると推計されています。

H29年度食育白書 【特集】多様な暮らしに対応した食育の推進~食卓を囲み食事を共にすることから始める食育の環~ 農林水産省

日本全体で、孤食が進んでいると言ってもいいかもしれません。そして、今後、単身者世帯の増加が予測されているので、さらに孤食の問題に拍車がかかると思います。

「孤食」の解決策は「(家族との)共食」だけ!?

農林水産省は、孤食の解決策として「共食」を掲げます。

近年、食事を共にすることと健康や良好な食生活に関する国内の研究結果を分析した報告(*1)があります。その報告によると、誰かと食事を共にする頻度が高い人は、<1>心の健康状態について、「気が散る・根気がないなどの精神的な自覚症状が少ない」、<2>食生活について、「ファストフードの利用が少ない」、「野菜や果物など健康的な食品の摂取頻度が高い」といった傾向がみられました。

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「共食」をすると、心の健康状態や食事内容のバランスがよい傾向があるそうです。心身ともに健康になれるというのが、共食の良い点でしょう。

ただし、「孤食」⇔「共食」として二項対立だけで、ものごとを論じることを著者は良しとしていません。

私たちはしばしば孤食を克服する概念として共食を置いてきた。しかし、あまりにも私たちは共食に期待を書けすぎていないだろうか。こころとからだに痛みを覚えらながら、それでもひとりぼっちで食べざるをえない子どもたちに居場所を与えるヴィジョンとして、あまりにも一家団欒というイメージに拘泥しすぎてこなかっただろうか。端的にいえば、孤食という険しい山を登りきることができる集団は、家族だけなのだろうか。

共食という袋小路

家族にだけ、責任転嫁をしても、社会構造上、どうしてもぬぐいきれない問題になっています。

だから、単に共食を追い求め続けても仕方のないことだと言います。むかしの家族はよかった、と言って懐古主義になったり、社会福祉を家族単位に過度に期待しすぎても、さらに息苦しい社会になってしまいそうです。

「縁食」という考え方を持ってみよう

縁とは、人間と人間の深くて思いつながり、という意味ではなく、単にめぐりあわせ、という意味でもある。じつはとてもあっさりした言葉だ。めぐりあわせであるから、明日はもう会えないかもしれない。場合によっては、縁食が縁となって恋人になったり、家族になったりするかもしれないが、いずれにしても、人間の「へり」であり「ふち」であるものが、ある場所の同じ時間に停泊しているにすぎない。

「縁食」という食のあり方

著者は、自身の経験や子ども食堂のあり方について触れ、この「縁食」を提唱します。

  • 仙台駅前の立ち食い寿司屋で、たまたま居合わせた常連客のこなれた所作や板前さんとの短いやり取り。
  • 秋田県への取材の最中、飲みたくなったどぶろくをもとめて雪の中繰り出して見つけた居酒屋、その居酒屋の亭主との心温まる時間。
  • 親が忙しかったり、貧困であったり、寂しかったり、誰かと美味しいご飯を食べたい子どもを救う地域の取り組みの「子ども食堂」。

これらは、全て、家族でもないし、深い人間同士のつながりを前提としているわけではなく、「縁」だと著者はいうのです。

このように、「孤食」⇔「共食」という軸を超えて、ひとつの「縁」という概念でつながる食の関係に可能性を見出すことをしてみたいと思います。

実は、先に取り上げた「農林水産省の食育白書」でも子ども食堂の存在と可能性について触れられています。

近年、地域住民等による自主的な取組として無料又は安価で栄養のある食事や温かな団らんを提供する子供食堂等が広まっており、家庭における共食が難しい子供たちに対し、食事を共にする機会を提供しています。農林水産省では、子供食堂と連携した地域における食育の推進を図るため、平成29(2017)年度に子供食堂の現状や課題、支援ニーズについて、全国の子供食堂の運営者を対象としたアンケート調査を行いました。主な活動目的として、「多様な子供たちの地域での居場所づくり」や「子育てに住民が関わる地域づくり」が多く意識されていましたが、「子供たちにマナーや食文化、食事や栄養の大切さを伝えること」や「高齢者や障害者を含む多様な地域の人との共食の場の提供」を意識している(「とても意識している」又は「どちらかといえば意識している」)と回答した子供食堂も、それぞれ約7割ありました。

H29年度食育白書 【特集】多様な暮らしに対応した食育の推進~食卓を囲み食事を共にすることから始める食育の環~ 農林水産省

もしかしたら、著者が提唱するような「縁食」という概念を用いて、これからの食の繋がりのあり方を語ることで、これらの活動の意義意味がさらに深く確認できるのかもしれないと思いました。

まとめ

  • 「孤食」の問題とは?――世帯構成比の変化によって、ひとりで食べたくないのに食べなくてはいけない人の数が増加しています。孤食は、心身の健康を害する悪影響が示唆されています。
  • 「孤食」の解決策は「(家族との)共食」だけ!?――共食は一つの手立てですが、その先には「家族」にだけ責務を押し付ける、無言の圧力を感じてしまいます。
  • 「縁食」という考え方を持ってみよう――家族だけではなく、地域やもっとライトな出会いも含めた「縁」という考え方で食の場・時間をつくれるような仕組みが求められているのではないでしょうか。

家族だけではなく、地域も含めた食の縁を育むことをどうしたら持てるのか?私もおりにふれて考えたいと思いました。

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