- 予測不能、ニューノーマルなどさまざまな言葉で形容される時代において、新しくてわくわくするような事業や生き方をどうやって発想するか?と思うこともあるでしょう。
- 実は、未来に没入することがポイントです。
- なぜなら、未来の世界から今を見ると、違和感だらけに感じて、そのことを通じて、新しい取り組みや考え方を得ることができるからです。
- 本書では、このような発想法をトランスフォーメーション思考と名付け、その内容と進め方を詳しく説明してくれています。
- 本書を読み終えると、現状の認知を打破して未来から俯瞰する魅力を感じることができるでしょう。
トランスフォーメーション思考とは!?
(計画思考とトランスフォーメーション思考の)根本的な違いは、思考回路が「目標にどう向かっていこうか」という次元ではなく、現状に対する「なんかおかしい」という違和感があまりに大きく、それが僕らの内側にある情熱をもっと強烈に突き動かすのだということ。
序章 30年後の未来から現在を見つめよう
未来の情報をさまざまなところから集めて、そして、議論をすることによって、30年という先でもおおかたの予測がつくものです。そして、その未来から現在(2022年)を俯瞰すると、違和感を覚えると著者はいいます。
例えば、30年前(1998年)を想像してみましょう。そこには、スマホはないですし、PCだってようやくインターネットに接続されるようになりましたが、すべてではありません。携帯電話だってまだまだこれからですし、SDGsも影も形もありませんでした。
「何か1つ調べるのに、検索エンジンがないのはたいへんすぎる」
「ちょっとした買い物でも、スーパーに売ってないものは遠出が必要で不便すぎる」
「友人と継続的に会わないと疎遠になってしまうが、そんな時間が取れなくて困る」
「携帯電話すらなく、待ち合わせがとても面倒くさい」
などなど、すべてが古臭くて、面倒なものに見えてしまうでしょう。
これから指数関数的に技術が発達し、そのことによって、より多くのことができる世の中になると言われています。ムーアの法則のようにハード面ではかなりの確度で、未来予測ができるとも言われており、これらかのビジネスパーソンの基礎知識として「未来情報」はあたりまえのように身に着けているべきものとして捉えられるでしょう。
情報収集のときには未来を扱っている書籍を手にしてみることもよいでしょう。例えば過去の投稿「【2】2030年:すべてが「加速」する世界に備えよ|ピーター・ディアマンディス,スティーブン・コトラー」で取り上げた書籍でも、いくつかの未来の技術にふれることができます。ぼーっと漠然として気持ちで未来を予測するのではなくて、確実性の高い技術で土台を作って、そこから発想を広げていくことが重要でしょう。
とあるIT企業の社長の講演で、こんな話を聞きました。当社は、20年前に設立した組織をITでつなぐ(今でいえば、DXする)ソフトウェア/アプリ開発で、上場を果たしたベンチャー企業です。いち早く、リモートワークに舵を切っています。
社長曰く、「当社は、5年先を予測して、自分たちの感性で製品(ソフト)を開発しています。その時に大切なのは、1つはハードから予測すること。なぜなら、ハードの進化というのはある程度、線形で予測ができるから。そしてもう1つは、自分たちの感性で仮説を立て、顧客の声は聞かないこと。なぜなら、顧客は現在を生きていて、その声に対応していてはもはや手遅れだから」
足がかりをもとに予測をして、そこから派生させていく思考法と、そこに自分の感性を持ち込むことが重要だということでした。
そういえば、自分の感性を信じることは、じつはデザイン思考でも大切な視点です。デザイン思考は現在の人のお困りごとから考えを始めるのですこし未来志向とは異なる考えかもしれませんが、自分を信じて仮説を出す点については、重要なので考え方をおさえておいて損はないと思います。
デザイン思考は「【デザイン思考とはなにか?】HELLO,DESIGN|石川俊祐」の投稿の書籍もおすすめです。未来志向の書籍と一緒に読むことで、それぞれの視野視点の違いを比較でき、さらに理解が深まるかもしれません。
トランスフォーメーション思考に大切な、MTPとは?
本書の根幹はMTPを描き、そこに臨場感をもつということです。MTPとは、Massive Transformative Purposeの略称で、個人や組織が最低30年以上先に実現する、現状とは全く異なる世界観という意味です。
序章 30年後の未来から現在を見つめよう
MTPを日本語にするとき、存在意義や存在理由とすることは避けたいと著者は言います。パーパスの訳として、よく使われている言葉ですが、その語感は、どうしても過去を連想させてしまいます。すでに存在しているものに対して、「なぜあるのか?」という発想で、ものごとを進めさせてしまうからです。
だから、著者はあえて、「世界観」と訳すのです。
また、トランスフォーメーションについても正しい理解を求めます。
そもそもトランスフォーメーションの言葉氾濫のきっかけとなったDX(デジタルトランスフォーメーション)は、単純に組織のデジタル化にとどまる話ではなく、社会全体に向けられた言葉だったといいます。初めてデジタルトランスフォーメーションを提唱したのは、スウェーデンにあるウメオ大学(当時)のエリック・ストルターマン教授とされており、DXとは端的にいえば、「デジタル技術で世界を変えること」でした。
2004年時点での定義は、
The digital transformation can be understood as the changes that the digital technology causes or influences in all aspects of human life
INFORMATION TECHNOLOGY AND THE GOOD LIVE, Erik Stolterman, Anna Groon Fors, Umea University.
だったそうです。自社や自分を変える内向きの発想ではなかったんですね。そもそも。
MTPを描く3つのポイントと6つの問い。
未来をリアルに描ききる3つのポイントは次のとおりです。
1)I want to…(大きな問題を解決する)。
2)by using…(急成長する技術を使って)。
3)To…(さらにその先の世界観を描く)。
1と2は目標と手段の話ですが、とくに3を描き切るのが大切といいます。そして、この3のチェックポイントとして6つの問いに答えられるかも合わせて見ていきます。
①夢を大きくとらえているか?
②人間らしさをどう後押しするか?
③夢がかなったあとにどうなるか?
④私は世界にどういう変化を起こしているのか?
⑤将来、誰と組んでいるか?
⑥そのとき、何のために生きているか?
さらに、PDCAではなくOODA(ウーダ)を運用することも発想転換のヒントになるといいます。
O・・Observe(観察)
O・・Orient(方向づけ)
D・・Decide(意思決定)
A・・Act(実行)
もともと軍事用語だったそうですが、その場その場で臨機応変に対応して決断していくのに適しているといいます。まさにVUCA時代を生き抜く考え方ですね。計画がどっしりあるという感じではなくて、現場の思考が重要です。
最後に、トランスフォーメーション思考で経営を展開しているテスラ社の例をあげてみましょう。
つまり、テスラ・モーターズの最終目標はあくまでもエネルギー革命(サステナブル・エナジー)であり、EVはその第一歩にすぎないのである。さらに解説するなら、ここにはいかにもイーロン・マスクらしい経営戦略がある。
第1章 MTPなき企業は生き残れない
このマスクらしい経営戦略とは、エネルギー革命を目指すにしても、カギを握るバッテリーがあまりにも高価格だそうです。現在の技術ではどうしても高くなってしまうからこそ、かっこいいプレミアムなクルマで第1段のプロダクト開発を行いました。これを元でに技術開発に注ぎ込む膨大なコストを捻出しています。
スケールの大きな夢を追って、確実に技術進展するバッテリーやソーラーパネルを前提にしている点がポイントでしょう。
まとめ
- トランスフォーメーション思考とは!?――未来情報を大量に浴びて、考えて、議論して、未来に没入することによって、現在に対して違和感を感じることから始める思考法です。
- トランスフォーメーション思考に大切な、MTPとは?――個人や組織が最低30年以上先に実現する、現状とは全く異なる世界観を描くことです。
- MTPを描く3つのポイントと6つの問い。――3つのポイントと6つの問いを駆使して、小さな発想にとどまらないようにしましょう。
テスラの事例を読んで、未来が見えているとはこういうことか・・と思いました。未来は遠いかもしれないし、テスラみたいな事例は作れない!って思ってしまうかもしれないんですけど、誰かが考えてくれるのではなく、自分たちで考えて、創るというスタンスが大事と思います。