- 近年、リベラルアーツが脚光を浴びています。なぜ、リベラルアーツを知ることがビジネスを始めさまざまなシーンで効くのでしょうか。
- 実は、名画はリベラルアーツを代表する分野かもしれません。
- なぜなら、芸術作品の中でも最も情報が凝縮され、かつ、昔から作品が残されているものであるからです。
- 本書では、田中靖浩さんのナビゲートで、まるで美術館を巡る感覚で、名画を通して人間の歴史(とくにヨーロッパ)を触れることができます。
- 本書を読み終えると、リベラルアーツにふれることの魅力を体感することができるでしょう。
絵は視野を広げてくれる
絵画はあらゆる芸術の中でもっとも凝縮度の高いものです。縦横2次元の平面キャンバスのなかに、ギュッと情報が詰め込まれています。
3 絵を見ることは視野を広げること
どんな絵にもその背景に隠された物語があるといいます。その隠れたストーリーに触れながら絵をみることで、さらにその絵を楽しむことになります。また、逆に絵を通じて、そのときどきの社会情勢を色彩をもってとらえることにもなります。
絵を見ることで、人の歴史を、また別の角度から読み解くことに繋がります。
あなたの視野を広げてくれるものなのです。
絵の歴史は人の歴史のうつし鏡
人々はどんな時代に、何について喜び、何を悲しみ、そして乗り越えてきたのか。さあヨーロッパ絵画をもとに彼らの「勇気と再生の物語」を訪ねましょう。それは長い時を経て、画家が私たちへ届けてくれた「未来へ虹を架ける物語」です。
プロローグ ペストとルネサンスと虹と
絵は時代をうつします。大切な視点は、パトロン、テーマ、流通だと著者はまとめます。
たとえばイタリア絵画が隆盛を誇った時代から、オランダ絵画へとトレンドが移ろいゆくなかで、次のような変遷がありました。
イタリア→オランダ
・パトロン:教会や王族→市民たち
・テーマ:宗教が中心→風景画や静物画など
・流通:受注生産→見込み生産
きっと人をとりまく価値観の変遷もあったことでしょう。何を人は信じて、そして何を喜び、悲しんできたのか、これを時系列で知ることで、今生きる私たちが当たり前に捉えているものごとが、実は近年作られた新しい当たり前なのかもしれないと気づきます。
同じようにリベラルアーツの中でも歴史に特化したのが、過去の投稿である「【歴史はなぜあなたを悩みから解放するのか?】歴史思考|深井龍之介」で取り上げさせていただいた書籍です。ぜひ、絵画を見る際にも、価値観の変遷がどう会ったのかを想像しながら見てみたいですね。
絵画から見られる普遍性と時代の見たて
軌跡の復活の立役者は街の商売人たち、そして彼らがパトロンとなって支えた若き芸術家たちです。彼らが一体となってつくりだしたフィレンツェの再生、それはまぎれもなく彼らがペストと経済危機から再生する物語だったのです。
2 ペストと経済危機から再生したフィレンツェの奇跡
グローバル社会が過度に進むと、直後に災いが起こるといいます。ペストも、梅毒も、世界恐慌も、リーマンショックも、コロナウイルスも、全部その直前には過度に生きすぎたグローバル化がありました。
こうしてみてみると、人類の歴史は、ウイルスと不況との闘いなんですね。健康を害するもの、社会を害するものこれらのハードルを乗り切ってきたから今がある。
このように俯瞰して歴史を捉えると、2020年2月から流行したコロナウイルスもきっと、高波の一つとして、遠い将来から観測されるのでしょう。
いま、描かれ注目を浴びている絵画は逆にどんな作品なのか?私たちとどのような価値観を共有しているものなのか?について、反対に考えてみたくもなりますね。
昨今注目を浴びている作家は、バンクシーや、バスキアなどでしょうか。
北の油絵技法と南のキャンバスのマリアージュが有名な「オイル・オン・キャンバス(Oil on Canvas)」なんです。この形式はこれ以降、海賀界の「スタンダード」となりました。
2 南と北のマリアージュで生まれた油絵と本
既存の絵の具よりも表現の幅を広げるために、絵の具が発明され(当時は亜麻仁油と顔料をまぜたもの)、そして、木板の歪みを克服し、流通を便利にするために船の帆を活用したキャンバス生地が活用されるようになりました。
こう考えると、絵画にはイノベーションの歴史も見て取れるということなんですね。
そこには、現状に満足することなく、つねに新しいことにチャレンジしてみる人の素性のようなものが見え隠れしています。
しかしカメラまで登場したとなると、これは話が別。「そのまま」写せるカメラの登場は、風景画や肖像画の仕事を奪いかねません。このあたり「AI(人工知能)の登場によって仕事がなくなる」と怯える21世紀の人とソックリです。
3 技術革新とマーケットの変化を乗り越える
画家ターナーは、グレート・ウエスタン鉄道を描いた”ぼんやり”した絵によって、写真では表現のできない、空気をえがきました。
AIが単純な仕事を駆逐する社会で、私たちは人らしい仕事のあり方をどう見つけていきましょう。
まとめ
- 絵は視野を広げてくれる――ギュッと要素を凝縮した絵画は、観察する人に新しい視点をもたらしてくれます。
- 絵の歴史は人の歴史のうつし鏡――絵画を軸に人の歴史を俯瞰することで、その時どきの生き方や価値観にもふれることができるでしょう。
- 絵画から見られる普遍性と時代の見たて――イノベーションの中で、画家がそうしてきたように、私たちも新しい技術革新の中でどう生きるのか?を見出していきましょう。
リベラルアーツを楽しむためにも、基礎的な知識は必要なのだなと思いました。何も知らなくては、単なる絵。でもその背景を知ることで、歴史と絵画と自分が三位一体の対話を始めることができるのだと思います。これを機会に、じっくりと美術館に行ってみたくなってきました。